ロボット展では紹介されない産業用ロボットのあたりまえ機能
初心者の方が産業用ロボットを知ろうとロボット展に行っても、基本機能は知ってる前提での展示ばかり。
今回はあえて最新機能ではなく、産業用ロボットの基本機能、あたりまえに付いている機能について紹介します。
■ ロボット言語
ロボットに対して、こっちに動きなさい!あっちで溶接しなさい!ここで待機!などの指示をつくるにはこの「ロボット言語」というプログラムを作成します。
基本中の基本のファンクションを紹介したいと思います。
- MOVE :ロボットの位置を指定するファンクション
- WAIT : 指定した時間ロボットが停止
- SET : I/O信号をONする
- RESET : I/O信号をOFFする
これらのファンクションを使うと例えば次のようなプログラムがかけます
1 MOVE (X,Y,Z) : ロボットが指定した位置(X,Y,Z)に移動
2 WAIT (1) : 一秒待機
3 SET (1) : 1番の信号をON (ロボットハンドが閉じる)
4 MOVE (X2,Y2,Z2) : ロボットが指定した位置(X2,Y2,Z2)に移動
5 RESET (1) : 1番の信号をOFF(ロボットハンドが開く)
上記プログラムで位置(X,Y,Z)にロボットが掴むものが置いてあれば、それを掴んで位置(X2,Y2,Z2)に運んで置くといったプログラムになります。
ただし注意が必要なのは上記のファンクションそのものが各ロボットメーカに実装されているとは限りません。
日本では動作プログラムの移植性を高めるためのプログラム言語 SLIMというものをベースにロボット言語を実装しているメーカが多いですが、各社独自のファンクション仕様になっています。
■ 内回り機能
下の図のように位置P1を開始点としてP3へ移動するプログラムを教示するとします。
でも実際は次の図のように障害物があったとしましょう。この場合は例えば位置P2を回避ポイントとして教示してやればP3まで到達することができます。
ところが、このような教示をするとP2でロボットは無駄に減速しなくてはなりません。
なぜならば、P2の位置で減速しないとロボットは正確にP2の位置を経由できないからです。
たとえば自動車で交差点を一切の減速なしに曲がることはほぼ不可能であるのと同じです。
もしP2の位置がロボットにとって重要な位置でない場合(ただ通過するだけ)は下の図のように内回り機能をつかって動作時間を短縮するのが一般的です。
ただしあまりにも内回りしすぎると障害物にあたってしまうので、内回りのレベルを設定できるようになっています。
■ エンコーダー補正機能
ロボットのモーターにはエンコーダという部品がついています。
この部品はロボットのモーターが今どの位置にいるのかを測定するセンサーです。
この位置を正しく測定するためにはロボットの原点がゼロになるようにセンサーの値を補正してやる必要があります。
普通はロボットを購入した時には最初から設定されているのですが、コントローラーを別のものに変えた時やモーターを交換した時などには設定が必要になります。
使い方はロボットの各軸を原点位置(目印がロボットアームについています)に動かして、設定ボタンを押せば設定完了!
ちなみに、ロボットの軸に対して2つのエンコーダが搭載されているロボットは原点位置に動かすことも含めて全自動で補正できます。
■ 自動ツール重心設定機能
産業用ロボットは先っぽに何かしらの道具を付けて使用します。
例えば、ものをつかめるようなハンド、溶接する溶接ガン、バリ取り用のグラインダ、検査用のカメラなどなど。
それらの道具のことを「ツール」と呼びます。
ロボットにツールを取り付ける際に必ずやらなければならない作業がツールの重心と質量の設定です。
これを正しく設定してやらないと、ロボットの能力を最大限に引き出すことができません。
なぜならロボットは常にモーターにかける最適な電流を計算しているのですが、その計算には重心と質量が必要だからです。
ツールの重心と質量が事前にわかっていればその数値を設定する事も可能ですが、そもそも重心や質量が不明な時もありますし、数値を入力するにも座標の位置と向きを間違えないように設定しなければならないので、まあまあ面倒くさいです。
そんな時は自動ツール重心設定機能を使いましょう。
使い方は、ロボットにツールを取り付けて測定用プログラムを再生してやれば自動で設定完了!